フジサルの戦術メモ

サッカー,フットサルの戦術論,哲学について僕の理論を喋ります

体の向きによって生まれる選択肢、消える選択肢

今回は体の向きがプレーに与える影響について話していこうと思います。例えば、ボールを左サイドで持つにしても、右サイドで持つにしても、体の向き一つでプレーの選択肢は変わってしまいます。先日、僕がブログ内で書いた「パスを繋ぎたければ三角形はつくるな」という記事を例に挙げて言えば、ダイヤをつくったからと言って必ずしもパスコースが3つできあがるというわけではないということです。これはサッカーにおけるどの状況でも同じことが言えることで、サッカーをプレーや観戦するうえでは絶対に欠かせないポイントの一つです。

 

今回は、そんなサッカーのミクロな部分についてパターン別に話していきます。

左サイド

縦向き

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これは、左サイドで右利きの選手がボールを受けた時の例です。黒くマーキングしているのはボールホルダーがフラットの状態での視野です。この体の向きは言ってしまえば悪い例で、左サイドで右利きの選手がボールを持った場合、縦を向いてドリブルをすると、相手が中を切りながら距離を詰めてきたときにドリブルしか選択肢がなくなってしまいます。そうなれば、自分の意思とは関係なく、一方的に縦ドリをせざるを得ないという状況になるのは容易に予想されます。その状況から逃げるにしても、後方にターンをして初めてバックパスという選択肢ができあがるという状況です。それに、もし相手が距離を置いて対応をしてきた場合、クロスという選択肢がありますが、クロスを上げようにもアウトサイドで高精度なボールが蹴れない限り、逆足による精度の低いクロスになる選手がほとんどです。

中向き

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では、中を向いた場合はどうでしょうか?同じ左サイドでボールを持つにしても選択肢は縦を向いた状態と比べると倍に増えています。視野もかなり広い範囲を把握できているのがわかると思います。このようにサイドでボールを持った場合に縦ではなく中を向くことで、まずは、中へのパスという選択肢と右足でのクロスという選択肢ができあがります。こうなれば、相手が中を警戒したら縦ドリ、中を空けたら間にいる選手、距離を置いたらフリーでクロス、というなんでも選択できる状況ができあがるわけです。後方の選手へバックパスをするにしても、縦を向いていた場合はターンをする必要がありましたが、ボールを受けた時に中を向いていればターンをする必要もありません。

選択肢を多く持つことで相手のリアクションを見てドリブルをするパターン。

ドリブル以外の選択をするパターン。

 

どちらも乾 貴士によるプレーです。参考にどうぞ。

右サイド ワン ツー

縦向き

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次の例は右サイドでワン ツーをしたというシーンです。これは一見、問題がないように思いますが、この画像のようにサイドの深い位置で、ワン ツーをしたときに縦を向いていると、キックの体勢が窮屈になってしまうのと、ボールホルダーの選択肢はクロスしかありません。もし、これでワン ツーをした後に相手が後方から距離を詰めてくれば、ボールホルダーの選択肢は一つしかないので、そのクロスの選択肢をつぶすことは何も難しくありません。そんな状況になれば、せっかく相手を深い位置まで押し込んだとしても何も効果的ではなくなってしまいます。

中向き

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そして、これが縦を向いた状態ではなく、中を向いた状態です。縦を向いた状態に比べると、選択肢がかなり増えているのがわかると思います。まず一つ目はファーへのシュートorシュート性の高いパス。二つ目は中へのパス。三つ目はマイナスへのパス。というようにこの体の向きでボールを受ければ、同じサイドでのワン ツーでも大きな効果が得られます。

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それとこれにはもう一つメリットがあって、縦向きにワン ツーをした場合というのはサイドに新たなスペースを生み出すことができなかったのですが、このように中向きに抜けていくことで、Aが元々いたスペースには新たなスペースをつくりだすことができ、そのスペースをCが使うことが可能です。縦向きの場合、Bに入った時にワン ツーのコースを切られたら右サイドの選択肢はなくなっていましたが、中向きに抜けることでCへのパスという新たな選択肢を提供することができます。

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今あげた例は僕のイメージとしては、ゴールエリアの角を狙うといような感覚です。サイドでのワン ツーはこの内のニアを狙うイメージで、それに対してファーを狙うのはロッベンやネイマール、メッシがカット インしていくイメージです。この選手たちはニアに体を向けた状態でボールを受けた後、相手の重心がニアに向き、食いついてきた場合にファーの角を目指してドリブルをすることで選択肢を増やしながらシュートまで持っていくというようなことをよくやっています。

ジョルディ アルバによる、中向き(ニア)の参考動画です。

ロッベンによる、中向き(ニア→ファ)の参考動画です。ロッベンの場合はニアからファーへ移るとき、真横ではなくマイナス方向へドリブルをすることで、より相手の届く範囲から遠くに運ぶというのも選択肢を増やす要因の一つです。

ハイプレス

左サイド

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ハイプレスをかけているチームが、よく右利きの選手が左サイドでボールを持っている時に仕掛けているというシーンを見るのですが、個人的にそれはあまりおすすめできません。右利きの選手が左サイドでボールを持った状態でプレスを受けた時に、ボールを奪われないために相手から遠い位置にボールを置いた場合、この画像のような体の向きになります。そうなると、逆サイドへの視野が簡単に確保できてしまうというのと、マイナス方向へドリブルで逃げると簡単にサイドチェンジをされてしまうという状況になってしまいます。最悪、サイドチェンジができなくてもゴールキーパーへのバックパスは可能です。それでは、「逆サイドにスペースがあるので使ってください」と言っているようなもので、配置的にはハメきれるのに自ら相手を誘導し、逃してしまうことになります。

右サイド

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これは、上で説明した左サイドの例とは逆に、右利きの選手が右サイドでボールを持った状態です。右サイドで右利きの選手がプレスを受けて、ボールを遠くに置いた場合、このような体の向きと視野になります。こうなると、ボールホルダーの選択肢は前線に放り込むという選択しかありません。「いや、ウイングへの選択肢もあるんじゃないの?」と思われますが、もし、ハイプレスの状況でウイングに縦パスを入れようとすれば、相手のサイドバックからしたら選択肢が一つに絞れているので、必ずそこは狙われます。なので、もちろん選手の質にも左右されますが、基本的にハイプレスというのは、サイドと同じ利き足の選手を狙うをことを前提としてデザインした方が効率が良いと言えます。

バルセロナによるハイプレスです。ぜひ参考に。

まとめ

サイドでボールを受けた場合、サイドでワンツーをした場合、ハイプレスをかけた場合、という3つを例に今回は話をしましたが、ここで注目してほしいのは、どれもまったく同じ状況にも関わらず、体の向き一つで選択肢の数が圧倒的に違うというところです。これはどういうことかと言うと、トラップや体の向き一つでプレーの未来を左右してしまうということでもあります。僕は、いくら綺麗にボールをコントロールしたとしても、自分の選択肢を自ら限定してしまうものや不利な状況になるようなコントロールは全てトラップミスだと認識しています。サッカーでは理論上の配置や数で相手を勝っても必ず優位になれるとは限りません。なので、ハイプレスをかけているシーンやチャンスを演出しているシーンなのに、なぜか回避されてしまったり、なぜか、得点に結びつかないというシーンには、この体の向きが影響しているかもしれないという話でした。

 

では、また。。。。。