フジサルの戦術メモ

サッカー,フットサルの戦術論,哲学について僕の理論を喋ります

サッカーとフットサルの融合

フットサルというのはサッカーに比べると、コートが狭く、相手との距離もかなり近いスポーツです。そうなると、自然とコート内の使えるスペースが限られてしまい、ボールには常にプレッシャーがかかっている状態です。当然、相手のプレスにもハマりやすくなります。そこでフットサルでは、それを防ぎ、攻撃をするために、常にポジションチェンジや自分のマークを外すことで、新たにスペースを生み出すということが必須になってきます。と、考えたときに、サッカーはフットサルよりもコートが広い分、スペースが大きく、相手との距離も遠い。なので、サッカーにフットサルの理論を落とし込めば、プレスを回避できない状況というのがあまり存在しないのではないか?と僕は思うわけです。そんなシーンが11月26日(日)に行われた鹿島アントラーズvs柏レイソルの中で、柏レイソルが実際にやっていたのを見ることができたので、今回はそのシーンについて話を進めていきます。

 

そのシーンではフットサルで言う「サイ」という動きと、サッカーでよく見かける「飛ばすパス」を利用してハイプレスを回避していたので、まずは「サイ」と「飛ばすパス」について話そうと思います。

サイ

まずは、フットサルでの「サイ」です。これは、どういうことかと言うと 、中に抜けていった選手が中央のスペースを利用することによって相手が釣られたら、もう一つ奥に新たなパスコースが生まれるという仕組みのものです。

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動画だけでは伝わりにくいところがあると思うので、ここからは図を使って詳しく説明していきます。これは、フットサルで言う4-0という形で、この時に相手の中央には大きなスペースが生まれます。まずは、そのスペースを底にいる二人の内、ボールを持っていない方の選手が利用しようと試みます。

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この時に、ライン間を通過しながら相手の前を通るというのが一つのポイントです。ここで、相手の背後を通過していくと、マークを受け渡されてそのままボールホルダーがプレスにハマるということが起きます。それはなぜかと言うと、足元へのパスという選択肢がないからです。ですが、この状況で相手の前を通過していくと、ライン間での足元へのパスが選択肢に追加されます。もし、相手がライン間での足元へのパスを許してしまえば、トラップから、そのままゴールへ直進されるというのが落ちです。それを防ぐという意味と、裏のスペースをケアをするという意味で、相手はどうしても付いていかざるを得ないという状況が、相手の前を通過することでつくることができます。その結果、もう一つ奥にいる右サイドの選手へ、新たなパスコースができあがります。これがフットサルで言う「サイ」というプレーです。

飛ばすパス

これはかなりシンプルで、この「飛ばすパス」というのは、パスコース上に二つの選択肢が重なった場合に、一つ飛ばして遠い方へパスを出すというものです。この場合だと、相手のラインを下げさせ、追い越す時間をつくるという効果があります。通常のようにサイドバックを経由してサイドハーフの選手にボールが渡った場合は、相手のスライドの幅が小さくなってしまうので、相手のラインを下げることができず、サイドバックが追い越すが時間が生まれない。ですが、この「飛ばすパス」を利用すれば相手の守備組織を大幅にスライドさせることができ、ラインを下げさせることで他の選手が追い越す時間が生まれます。

柏レイソルによる、「サイ」と「飛ばすパス」の融合

こちらが、実際の柏レイソルの動画です。

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まず、柏レイソルはセンターバック3人+ボランチ1人で3-1のダイヤをつくります。この状態でも、すでに相手選手3人に対して、柏レイソルの選手が4人(GK含めて5人)いるので数的優位です。

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次に、センターバック(中央)→ボランチ→センターバック(右)→センターバック(中央)とパスを繋いだあと、センターバック(右)が相手の前を通過しながら中で受けようという動きをします。

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その、センターバック(右)が相手の前を通過しながら中で受けようという動きに対して、相手はついていくという判断をしたので、右サイドにスペースが生まれ、パスコースができあがりました。ここまでが、フットサルで言う「サイ」です。

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そして、これが「サイ」でパスコースをつくった後に「飛ばすパス」を行ったシーンです。「飛ばすパス」の解説でも言いましたが、一つ飛ばして奥にいる選手がパスを受けることで、相手のラインは下がり、味方選手が追い越す時間をつくることができています。これが、サッカーでの「サイ」と「飛ばすパス」です。

まとめ

このシーンを見ていた時、まさに「フットサルだな」と思いました。ただ、このシーンで本当に素晴らしいのは、フットサルを取り入れたことではなくて、フットサルの理論を取り入れ、フットサルとは別の形で表現したというところです。フットサルでは、センターバック(左)が中に入ったとしたらボランチの選手が下りなければ選択肢は生まれません。ですが、柏レイソルの場合は、選択肢をつくるためにボランチではなく、サイドハーフの選手を利用していました。これは11人制のサッカーだからこそできる形です。このように、決して難しいことはやらずに、既存のアイデアを焼き直すことで、新しい形へと進化を遂げるとは本当に素晴らしいものだと再確認しました。

 

では、また。。。。。

体の向きによって生まれる選択肢、消える選択肢

今回は体の向きがプレーに与える影響について話していこうと思います。例えば、ボールを左サイドで持つにしても、右サイドで持つにしても、体の向き一つでプレーの選択肢は変わってしまいます。先日、僕がブログ内で書いた「パスを繋ぎたければ三角形はつくるな」という記事を例に挙げて言えば、ダイヤをつくったからと言って必ずしもパスコースが3つできあがるというわけではないということです。これはサッカーにおけるどの状況でも同じことが言えることで、サッカーをプレーや観戦するうえでは絶対に欠かせないポイントの一つです。

 

今回は、そんなサッカーのミクロな部分についてパターン別に話していきます。

左サイド

縦向き

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これは、左サイドで右利きの選手がボールを受けた時の例です。黒くマーキングしているのはボールホルダーがフラットの状態での視野です。この体の向きは言ってしまえば悪い例で、左サイドで右利きの選手がボールを持った場合、縦を向いてドリブルをすると、相手が中を切りながら距離を詰めてきたときにドリブルしか選択肢がなくなってしまいます。そうなれば、自分の意思とは関係なく、一方的に縦ドリをせざるを得ないという状況になるのは容易に予想されます。その状況から逃げるにしても、後方にターンをして初めてバックパスという選択肢ができあがるという状況です。それに、もし相手が距離を置いて対応をしてきた場合、クロスという選択肢がありますが、クロスを上げようにもアウトサイドで高精度なボールが蹴れない限り、逆足による精度の低いクロスになる選手がほとんどです。

中向き

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では、中を向いた場合はどうでしょうか?同じ左サイドでボールを持つにしても選択肢は縦を向いた状態と比べると倍に増えています。視野もかなり広い範囲を把握できているのがわかると思います。このようにサイドでボールを持った場合に縦ではなく中を向くことで、まずは、中へのパスという選択肢と右足でのクロスという選択肢ができあがります。こうなれば、相手が中を警戒したら縦ドリ、中を空けたら間にいる選手、距離を置いたらフリーでクロス、というなんでも選択できる状況ができあがるわけです。後方の選手へバックパスをするにしても、縦を向いていた場合はターンをする必要がありましたが、ボールを受けた時に中を向いていればターンをする必要もありません。

選択肢を多く持つことで相手のリアクションを見てドリブルをするパターン。

ドリブル以外の選択をするパターン。

 

どちらも乾 貴士によるプレーです。参考にどうぞ。

右サイド ワン ツー

縦向き

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次の例は右サイドでワン ツーをしたというシーンです。これは一見、問題がないように思いますが、この画像のようにサイドの深い位置で、ワン ツーをしたときに縦を向いていると、キックの体勢が窮屈になってしまうのと、ボールホルダーの選択肢はクロスしかありません。もし、これでワン ツーをした後に相手が後方から距離を詰めてくれば、ボールホルダーの選択肢は一つしかないので、そのクロスの選択肢をつぶすことは何も難しくありません。そんな状況になれば、せっかく相手を深い位置まで押し込んだとしても何も効果的ではなくなってしまいます。

中向き

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そして、これが縦を向いた状態ではなく、中を向いた状態です。縦を向いた状態に比べると、選択肢がかなり増えているのがわかると思います。まず一つ目はファーへのシュートorシュート性の高いパス。二つ目は中へのパス。三つ目はマイナスへのパス。というようにこの体の向きでボールを受ければ、同じサイドでのワン ツーでも大きな効果が得られます。

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それとこれにはもう一つメリットがあって、縦向きにワン ツーをした場合というのはサイドに新たなスペースを生み出すことができなかったのですが、このように中向きに抜けていくことで、Aが元々いたスペースには新たなスペースをつくりだすことができ、そのスペースをCが使うことが可能です。縦向きの場合、Bに入った時にワン ツーのコースを切られたら右サイドの選択肢はなくなっていましたが、中向きに抜けることでCへのパスという新たな選択肢を提供することができます。

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今あげた例は僕のイメージとしては、ゴールエリアの角を狙うといような感覚です。サイドでのワン ツーはこの内のニアを狙うイメージで、それに対してファーを狙うのはロッベンやネイマール、メッシがカット インしていくイメージです。この選手たちはニアに体を向けた状態でボールを受けた後、相手の重心がニアに向き、食いついてきた場合にファーの角を目指してドリブルをすることで選択肢を増やしながらシュートまで持っていくというようなことをよくやっています。

ジョルディ アルバによる、中向き(ニア)の参考動画です。

ロッベンによる、中向き(ニア→ファ)の参考動画です。ロッベンの場合はニアからファーへ移るとき、真横ではなくマイナス方向へドリブルをすることで、より相手の届く範囲から遠くに運ぶというのも選択肢を増やす要因の一つです。

ハイプレス

左サイド

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ハイプレスをかけているチームが、よく右利きの選手が左サイドでボールを持っている時に仕掛けているというシーンを見るのですが、個人的にそれはあまりおすすめできません。右利きの選手が左サイドでボールを持った状態でプレスを受けた時に、ボールを奪われないために相手から遠い位置にボールを置いた場合、この画像のような体の向きになります。そうなると、逆サイドへの視野が簡単に確保できてしまうというのと、マイナス方向へドリブルで逃げると簡単にサイドチェンジをされてしまうという状況になってしまいます。最悪、サイドチェンジができなくてもゴールキーパーへのバックパスは可能です。それでは、「逆サイドにスペースがあるので使ってください」と言っているようなもので、配置的にはハメきれるのに自ら相手を誘導し、逃してしまうことになります。

右サイド

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これは、上で説明した左サイドの例とは逆に、右利きの選手が右サイドでボールを持った状態です。右サイドで右利きの選手がプレスを受けて、ボールを遠くに置いた場合、このような体の向きと視野になります。こうなると、ボールホルダーの選択肢は前線に放り込むという選択しかありません。「いや、ウイングへの選択肢もあるんじゃないの?」と思われますが、もし、ハイプレスの状況でウイングに縦パスを入れようとすれば、相手のサイドバックからしたら選択肢が一つに絞れているので、必ずそこは狙われます。なので、もちろん選手の質にも左右されますが、基本的にハイプレスというのは、サイドと同じ利き足の選手を狙うをことを前提としてデザインした方が効率が良いと言えます。

バルセロナによるハイプレスです。ぜひ参考に。

まとめ

サイドでボールを受けた場合、サイドでワンツーをした場合、ハイプレスをかけた場合、という3つを例に今回は話をしましたが、ここで注目してほしいのは、どれもまったく同じ状況にも関わらず、体の向き一つで選択肢の数が圧倒的に違うというところです。これはどういうことかと言うと、トラップや体の向き一つでプレーの未来を左右してしまうということでもあります。僕は、いくら綺麗にボールをコントロールしたとしても、自分の選択肢を自ら限定してしまうものや不利な状況になるようなコントロールは全てトラップミスだと認識しています。サッカーでは理論上の配置や数で相手を勝っても必ず優位になれるとは限りません。なので、ハイプレスをかけているシーンやチャンスを演出しているシーンなのに、なぜか回避されてしまったり、なぜか、得点に結びつかないというシーンには、この体の向きが影響しているかもしれないという話でした。

 

では、また。。。。。

プレスをかけることと守ることはイコールではない

ここ数か月前にDAZNに登録してからJリーグを見る機会がかなり増えました。そこでいつも個人的に思うことがあります。それは、相手チームと戦う以前に、自分たち自ら敗因をつくってしまっているケースがあまりにも多いということです。それはJリーグのリーグそのものに問題があるのではなくて、日本のサッカーそのものに問題があると思っています。先日行われた日本代表vsブラジル代表の試合を見ていてもそれは同じでした。今回は11月10日(金)に行われた日本代表vsブラジル代表のある二つのシーンを取り上げて、自ら敗因をつくってしまっているケースの内の守備について話そうと思います。

人数をかけたが故に不利になる

まず、一つ目の動画は、マルセロからネイマールにパスが出て、その間を通されてプレスを回避されたというシーンです。まずは、このシーンの問題点と改善策について触れていきます。

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マルセロからネイマールにパスが出たシーンです。日本の選手の重心を見ればわかりますが、そのパスが出たことに対して、二人でプレスに行こうとしているのがわかります。恐らく、日本の選手としては「ネイマールを自由にさせてはいけない!だからプレスをかけなければ!」というような感じで、これはまったくそのとおりなのですが、自由にさせないための策が個人的には間違っているなと感じました。

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そして、上のシーンの後、ネイマールに二人でプレスをかけたシーンがこの画像になります。ネイマールにプレスをかけに行ったことによって、マルセロにスペースを与えてしまいました。そうなれば、マルセロからしたらこの空いたスペースを使えばプレスを受けずに前進できるわけですから、当然、マルセロは侵入していくわけです。それに、この状況で、ネイマールの利き足とマルセロの動きを考慮すると、例え間へのコースが切れていたとしてもマイナス方向へ逃げられてプレスを回避されるのが落ちです。そうなれば、どっちにしろ3人目としてスペースに侵入したマルセロを使われるのが予想されます。f:id:fujisal:20171111130003p:plain

では、どうすればよかったのか?それはかなり簡単な話で、そもそもスペースを埋めてしまえば解決するという話です。もし、このように二人でプレスに行かず、二人のうち一人がその場に立ち止まっていたらどうだったでしょうか?この場合、有効に使えるスペースがそもそも存在しないので、マルセロは恐らく、抜けるという判断をしなかったはずです。こうすればネイマールが仕掛けるためのスペースも同時に埋めることができるので、ここから予測されるネイマールの選択はマルセロへのバックパスのみ。そうして、相手の侵入を防ぐことができたら、相手のボールの位置に合わせて、またポジションを修正していけばいいだけです。

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ただ、二人でプレスへ行ってしまったことには仕方がありませんが、この場合は二人でプレスに行ったとしても、まだ方法はあります。それがこの画像の矢印のようにスライドするパターンです。これは、どういうことかと言うと、スペースを埋めるために左サイドから一個ずつ奥にいる選手がスライドをするという方法で、このようにスペースを埋めてしまえばネイマールによる間からのマルセロへのパスともう一つ奥にいる選手へのパスを奪取の狙い目にすることができます。

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ただし、この方法はあくまで修正ですので、最初に言った方法がベストだと僕は思っています。この場合でも守ることは可能かもしれませんが、ネイマールの利き足とボールの持ち方を考慮するとマイナスに逃げられる可能性がある。もしネイマールにマイナス方向にドリブルで逃げられてしまえば、中央の選手にパスが渡ることになり、中央の選手の前方には大きなスペースができることになるので、より危険な配置になることが考えられます。なので、最初に言った、その場に居座るだけという選択がベストだったのではないかというわけです。

守備時の優先順位

続いて、二つ目のシーンはこちらです。井手口がCBにプレスをかけに行ったことによって前進されるというシーンです。

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これは、左サイドバックにパスが出る前のシーンですが、実はこのシーンを見てもらえればわかると思いますが、井手口がセンターバックにプレスをかけに行くまでは日本の守備組織に穴は存在していないんです。この後、左サイドバックを経由してセンターバックにボールが渡りますが、センターバックにボールが渡った状態からブラジルの選手は有効な攻撃ができる配置でしょうか?僕にはこの配置からブラジルが攻撃の糸口に直結するような選択をするのは不可能だと思います。

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そしてこれが、井手口が自分の埋めているスペースを捨てて相手センターバックにプレスをかけに行ったシーンです。

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ここで見てほしいのが井手口が自分の持ち場を離れたことによって相手に与えたスペースです。ブラジル代表クラスの選手たちがこれだけわかりやすく空いたスペースを見逃すわけがありません。それに、守備のセオリーでもあるFW-MF-DF間の距離をコンパクトにすることでスペースを埋めるという一つの鉄則のようなものをおもいっきり無視しています。自分の選択の方がセオリーよりも効果的だと言うのならセオリーは絶対ではありませんが、このように相手にとって優位な状況をつくるのならセオリーは破るべきではありません。

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その結果、井手口が埋めていたはずのスペースを3人目の動きによって見事に使われてしまいました。

まとめ

今回、話した内容は守備の戦術というよりは、守備の根本的な部分の話です。そして、プレスをかければ必ずしも相手のプレーを限定することができ、守ることに直結するとは限らないということです。今回、例に挙げたどちらのシーンもプレスをかけることではなくて、プレスをかけずにその場に居座ることで守ることができるというシーンでした。

 

前にも「日本代表の抱える守備の問題点とは?」という記事でも触れましたが、この国のサッカーにはスペースを埋める意識と、守備の優先順位があまり浸透していないように見えます。こういった部分はあくまで、高度な戦術ではなく、高度な戦術を実現するためだったり、個人を活かすためのベースにすぎないので、これができないということは相手チームと戦う以前に自分たち自ら敗因をつくっているということになります。ただ、井手口なんかの対人スキルはかなり高いものがあるので、こういった部分が常識的に行えるようになればかなり化けるのではないかなと密かに期待していたりもします。

 

では、また。。。。。

戦術や選手の組み合わせによって選手の能力は左右される

もしも、メッシのドリブルを120%発揮させることができたら。もしも、ピルロのキックを120%発揮させることができたら。もしも、カンテの奪取能力を120%発揮させることができたら。

 

本当にそんなことがサッカーでは可能なのか?というのが今この記事を読んでいるあなたの一番の疑問だと思います。もし、そんなことができるのなら夢のような話ですよね。今回はそんな夢のような話である、選手の組み合わせによって選手の能力をフルに発揮させる方法を少しだけ紹介しようと思います。

 

まずはこの動画を。

これはマンチェスター シティvsウィスト ブロムウィッチのレロイ サネのゴール。左サイドで受けたレロイ サネは縦方向にマイナス気味に仕掛け、相手がニアを警戒したところ股抜きからファーへ、というゴールです。実はこのシーンに至るまでに、今回話すうえでとても重要な要素が含まれているので、その部分を主に取り上げていこうと思います。

レロイ サネの個性とダビド シルバの個性

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この画像のシーンは右サイドからフェルナンジーニョがボールを受けたシーンです。相手選手のルックアップのタイミングや方向を見る限り、恐らく、この相手のCHはかなりシルバを警戒している様子です。その警戒をするあまり絞ることができずバイタルエリアを大きく開けることになってしまっています。ダビド シルバがいれば勝手に相手が警戒するので、それもダビド シルバを起用する一つの利点とも言えます。

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当然、マンチェスター シティとしては、中央にあれだけ大きなスペースがあれば利用するに決まっています。もし、あのスペースにガブリエル ジェズスが下りてきて振り向けば、簡単にシュートまで持っていくことができるので、フェルナンジーニョからしたらパス一本でシュートまで到達できるからです。ですが、相手もそんな簡単にシュートまで行けるような状況をつくるわけにはいかないので、スペースへ下りてきたガブリエル ジェズスへ付いて行かざるを得ないというのがこの状況です。そして、このシーンで本領を発揮するのがダビド シルバです。ダビド シルバは僕が見る限り、マンチェスター シティの中でもスペース感覚が、出し手としても受け手としても一人だけ頭抜けています。もちろん、他の選手も素晴らしいクオリティーだと思いますが、それでもです。そんなダビド シルバならガブリエル ジェズスが利用したことによって生まれたスペースを見逃すわけがありません。

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これが、上で説明したガブリエル ジェズスがスペースを利用したことによって生まれたスペースをダビド シルバが利用したというシーンです。画像だと画面外なのですが、この画面外にはレロイ サネと相手SBがいて、その相手SBはダビド シルバのいるゴール中央のスペースを埋めるために、どうしても中央を絞るという選択をすることになります。その選択をすることは中央のスペースを消すのと同時に左サイドに開いて待っているレロイ サネのいるスペースを捨てることなり、そうなると、相手の守備ブロックの人数の方が多いにも関わらず、ピッチの中央から左ハーフスペースにかけて、ダビド シルバ+レロイ サネvsSBという2対1をつくりあげることができます。2対1になった相手SBは当然2択を選ばされるのでフェルナンジーニョの選択を限定することはできません。

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その結果、相手SBは中央のスペースを埋め、相手守備組織は完全に中央から右サイドへ重心を移動することになりました。そうしてできあがったのがこの状況です。この状況を見ればわかるとおり、レロイ サネと相手SBの距離はかなり開いてしまっていて、相手守備組織の重心が中央から右サイドへ移動しています。それにより、レロイ サネにはかなり大きなスペースと余裕ができました。こうなれば左サイドでの仕掛けを得意とするレロイ サネはやりたい放題です。これだけの選手をこれだけのスペースの中で止めるのは簡単なことではありません。そして、この後、レロイ サネは縦に仕掛け、股抜きからファーへ撃つというとても素晴らしいゴールを演出しています。

 

これがダビド シルバの長所であるスペースを利用することと、レロイ サネの長所である仕掛けを組み合わせることによって生まれたゴールです。

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その他の例

これは同じ試合内のフェルナンジーニョによるゴールです。この動画もレロイ サネが中央からのボールを受けて仕掛けてからのゴールで、違うのはレロイ サネに対するスペースの提供の仕方です。この動画はダビド シルバがフットサルで言うパラレラと同じ動きをして、中央へスペースを作ったという状況で、この動きによってレロイ サネにはダビド シルバへのパスコースと中のスペースへのドリブルという2つの選択肢ができあがっています。その結果、レロイ サネは中へドリブルで侵入することができ、より状態のいいフェルナンジーニョに渡すことで生まれたゴールがこの動画です。

次の例は、先日、僕の書いた記事「パスを繋ぎたければ三角形はつくるな」でも紹介したゴールです。この動画の30秒あたりを見てみてください。このシーンでは、通常なら相手の間をとってパスコースを確保するところですが、味方選手は、逆に離れていっているのがわかると思います。その離れていったことにより、パスコースをつくるのではなくスペースをつくることで、本来なら孤立してプレーが困難になるシーンを生み出し、レロイ サネの長所でもある左サイドからの仕掛けをより効果的に発揮することができています。ヨハン クライフの言う「本当にチームメイトを助けられるのは、そこから離れた時だ。」という言葉をそのまま表現したようなシーンです。

 

他にも「ポジショナルプレーにおける質的優位を活かす方法」でも紹介した、名古屋グランパスのロビン シモビッチ、和泉 竜司、ガブリエル シャビエルの関係もかなり効果的な組み合わせです。

まとめ

「戦術は選手を縛りつけるようなもの」という解釈をして、戦術を毛嫌いする人が少なからずいますが、それは違います。今回、紹介したシーンを見てもわかるとおり、選手たちは戦術によって縛られるどころが、自らのプレーを最大限に発揮することができ、チームに大きく貢献することができています。もし、戦術が本当に選手を縛りつけるようなものなら、選手たちは自分たちの長所を発揮することができないでしょう。なぜなら、縛り付けられてしまえば、そこに自分の意思はないからです。僕はむしろ、「戦術は選手を解放するもの」だと思っています。今回、紹介したシーンもそうですが、相手選手から解放された選手たちのプレーというのは本当に素晴らしいものがあります。こういった選手の組み合わせや戦術によって選手の長所をより効果的に発揮することで、そこからスーパープレイが生まれることを考えれば、戦術を毛嫌いする理由は見つからないのではないでしょうか?

 

今回、紹介した選手の組み合わせはほんの一部にしか過ぎません。今回、紹介した組み合わせ以外にも、この選手の組み合わせは選手の個性がある数だけ存在します。このような観点で自分の応援しているチームを見ていけば、必ず適切な補強や組み合わせが見えてくるようになるので、是非、参考にしてみてください。

 

では、また。。。。。

パスを繋ぎたければ三角形はつくるな

いきなりですが、すこし考えてみてほしいことがあります。あなたが考える、パスをスムーズに繋ぎながら相手を崩すし、得点を得るための手段はなにがありますか?

 

多くの人は「間をとる」「数的優位をつくる」「ポジションチェンジをする」と、いろいろなことを考えると思います。そのいろいろな手段の中に「三角形をつくる」という手段があるのではないでしょうか?そして、この記事を見ているあなたは、恐らく、タイトルを見て「いやいや、何を言ってるんだ、三角形をつくるのが基本だろ」と思っているはずです。大丈夫です。そう考えているあなたが正常だと思います。では、僕が異常か?と言われるとそうではなくて、ただ、今から話す内容はあなたが考えた常識的な「三角形を形成する」と言ったことを少しだけ否定する内容かもしれないということです。

 

その今から話す内容は、三角形を形成することとは似て非なるもので、この記事によってあなたに新しい視点を与えることができたらいいなと思います。そして、もし同じような見方をしているという人がいれば再確認の意味で見ていただきたいです。

三角形はつくるな、ダイヤをつくれ

「三角形はつくるな」と僕は言いました。では、どうしたらいいのか?結論から言うとダイヤをつくればいいという話です。ただ、これだけでは説明が不十分ですので、ダイヤをつくりメリットとは、なぜダイヤなのか、そのダイヤのつくり方とは、ということをここからは説明していこうと思います。まずはダイヤをつくるメリットから。

 ダイヤをつくるメリット

ダイヤをつくるメリットはいろいろありますが、まず初めに考えらるのが選択肢の数の違いです。

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上、2つの画像を比較してみてください。三角形をつくった場合はボールホルダーから見てパスコースが2つ。ダイヤをつくった場合はパスコースがすべてで3つできあがるのがわかると思います。3つもある選択肢を限定していくのは相手からすれば簡単なことではありません。ボールホルダーからすれば選択肢は多くあった方が当然いいわけで、相手は選択肢が多ければ多いほど限定するのが困難になります。そんな状況を実現することが可能なのが「三角形をつくる」ことではなく、この「ダイヤをつくる」ことだと僕は考えています。 f:id:fujisal:20171024173824p:plain

それともう一つダイヤをつくるうえでメリットがあり、それが、スペースの使い方についてです。例えば、三角形の場合、ボールホルダーを中心にサイドに開いてできたスペースを利用したときは、他のポジションの選手がスペースを認知し、ロングランをして初めて利用することができます。ですが、このダイヤの場合は基本的にボールホルダーに対して対角の選手がスペースを使うことになるので、三角形の時に必要としていたスペースを見つけ、ロングランを繰り返すという過程が必要がなくなります。そうなれば、やっていることは結果として変わらないのに、思考と行動が単純化され、非常に効率がいいというわけです。もちろん、場合によっては、ボールホルダーが間のスペースにドリブルで侵入していくのもアリです。「なぜ多くのチームはハイプレスにハマるのか」という記事で紹介しているシーンなんかはまさにその例です。

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ただ、サイドの選手が空いたスペースを利用するのは個人的にはあまりおすすめできません。このダイヤを使うメリットとして先ほど選択肢を増やすことができると言いましたが、サイドの選手が入ってきてしまうと、その選択肢が一つ削られてしまうことになるうえに一番狙いたいはずの対角へのパスが味方選手によって塞がれてしまいます。なので、サイドの選手が中へ入るというパターンはできるだけやらない方が無難でしょう。最初の配置でボールホルダーの対角にいる選手がサイドに下りればダイヤをつくることそのものは解決しますが、それではダイヤをつくるのが目的になってしまい、もし片方のサイドを相手DFに切られてしまったら、ダイヤをつくるうえでのメリットを失ってしまいます。それではダイヤができあがっても意味がありません。

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今、説明しているダイヤのイメージがつかないという方はビルドアップ時にGKがボールを持った状況をイメージするといいかもしれません。CB2枚がワイドに開き、間にできたスペースをボランチの選手が利用することで、パスコースを生み出す方法です。このようなシーンなんかは相手に選択肢を与えることで対角の選手を使うことができるのでかなり理想的だと僕は考えています。では、なぜ対角の選手が受ける必要があり、スペースを利用することが理想的かと言うと、対角の選手を使った場合というのは、高確率で次のダイヤへと繋げることが可能だからです。例えば、このシーンでボランチの選手がボールを受ければ、両CHとCFとダイヤの関係をつくることができます。なので、この対角へのパスを狙ってあげれば理論上では半無限にパスコースを3つつくりあげることができ、さらに前進することも可能になるということです。そのような状況になれば、相手はプレーを限定しきれないので、常にプレスをかけられない状況が続くことになります。

 

今回、この記事で僕が言いたいことを簡単に言ってしまうと、このビルドアップ時の状況をピッチのあらゆる場面でつくりだすことができれば、そのビルドアップ時と同じように、よりスムーズに試合を運ぶことができるということです。ですが、そんなことができるのか?という疑問があると思いますので、ここからはダイヤをつくる方法を少しだけ紹介していきます。

ダイヤをつくる方法

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ここからはフォーメーションによる盤面で説明していこうと思います。正直ここは誰がボールを持っていたとしてもいいのですが、とりあえず右SBがボールを持った状況を仮定します。4-3-3で考えた場合、右SBが普通にボールを持つとそのままの状況ではサイドで三角形しかできあがりません。むしろ、それが基本だと思います。ですが、こうなるとボールホルダーから見た選択肢は前方に2つ。これでは、ボールホルダーの選択肢が簡単に限定されてしまいます。そんな限られた選択肢を増やすのがダイヤです。では、どうしたらダイヤができあがるのか?そのダイヤをつくる具体的な方法を2つほど今から紹介していきます。

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これはどういう状況かというと、右CHがボールホルダーとほぼ平行まで下り、その右CHが元々いたところにできたスペースをCFが利用したという状況です。また、ボールホルダーである右SBは中を見つつ前方を向いているので、中、縦、左と全て選択ができます。だとしたら、その方向にパスコースやスペースをつくってあげればよくて、その結果として、ポジションを取ったときにパスコースが全てで3つできあがりダイヤができたというのがこの形ということです。

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このように、CFが元々いたスペースを利用し、左CHがCFへ→左SBがCHへ→左CBが左SBへ→ボランチが左CBへ。というように、スペースを利用することによってできた新たなスペースをさらに利用していくのもおもしろいかもしれません。こうしてあげれば、右SBから見て対角の選手をつかった場合に、右WGがハーフスペースを利用し、右WGが元々いた場所に新たにスペースができあがるので、その新たなスペースを右SBが利用すれば、再びダイヤをつくることができます。

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ここでも4-3-3をベースに右SBがボールを持った場合を仮定していきましょう。これは先ほどのシーンに比べると、かなり低い位置でボールを持ち、さらに、右SBは前方ではなく、中を向いているという状況です。

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そして、これが上のシーンからボールホルダーを中心にダイヤをつくった状況です。右CBと右WGはボールホルダーに対してほぼ平行をとり、右CHは元々右CBがいたスペースを利用し、パスコースをつくっているという状況になります。この状況も上で説明した状況と位置が違うというだけであって、考え方は同じです。パスコースが3つと中央のスペース。対角を使うことでまた新たなダイヤ(右CB+GK+ボランチ+左CB)ができあがります。

 

ここでは、2つ紹介しましたが、ダイヤをつくる方法はこれだけではないので、是非、いろいろ思考してみてください。

マンチェスター シティによるダイヤ

ここまでダイヤをつくるメリットとその方法を僕なりに説明してきましたが、それ本当に可能なの?と思われている方も多いと思います。なので、グアルディオラ監督が率いるマンチェスター シティを元にダイヤについてより現実的な話をここではしていこうと思います。

 

まずはこの動画。

具体的にどこにダイヤができていたかわかりましたか?あえて言うのなら常にダイヤができていました。では、どこにできていたか、より鮮明に理解していただくために画像を使って少し説明していこうと思います。

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画面の関係により、一番初めにGKへバックパスするもダイヤはできていましたが、そのシーンは省いています。なので、これはGKがバックパスを受けたシーンです。

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GKからパスを受けたシーン。

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右サイドへ展開後、再びダイヤ。

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 ここで、対角の選手を基点に逆サイドへ展開することになります。

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再び左サイドへ展開したシーンです。

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ここからはレロイ サネにボールが渡った後のゴール前でのシーン。

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そして、レロイ サネが裏へ抜け出し、横パスからのゴール。

 

ここでは、ボールに関連したわかりやすいダイヤをとりあげましたが、同じシーンで複数のダイヤができているシーンがいくつかあります。

 

以上の解説を読み終えたうえで、下の動画2つを見てもらいたいです。きっと鮮明にダイヤを確認することができると思います。

 

まとめ

ヨハン クライフは「サッカーはシンプルだ、しかしシンプルにプレーするのは難しい」と言いましたが、このダイヤはシンプルにプレーをするための一つのヒントになるのではないかと僕は思っています。そのヨハン クライフもかつて、ダイヤの在り方についてはかなりこだわっていましたし、もしかしたら、このような未来がくることをヨハン クライフはあの時すでに知っていたのかもしれません。

 

僕が、この記事のタイトルでも言っている「三角形をつくるな」という理由が伝わりましたでしょうか。今回、この記事で重要なのは、正直な話、ダイヤをつくることでも三角形をつくらないことでもありません。重要なのは、選択肢を増やし、その過程をよりシンプルにしてあげましょうということです。その結果として、本来は三角形をベースに考えていたところをダイヤとして考えてあげることで選択肢を増やすことができればいいわけです。それに、このダイヤも結局は、最初に考えてもらった「得点を得るための手段」にしかすぎません。サッカーでは得点を得ることこそが目的であり、ドリブルもパスもそのための手段です。

 

ここまでサッカーやダイヤについていろいろ語ってきましたが、この記事をもとに、新たな視点を提供できたらいいなと思います。是非、ダイヤを、サッカー観戦をするとき、サッカーをプレーするときの一つの参考にしてみてください。

 

では、また。。。。。

※三角形の方が効果的なシーンというのも存在しますし、ダイヤを三角形2つという見方もできるので、三角形をつくるなというのは言い過ぎました(笑)